猫の殺処分について考える
こんにちは!!今回は重い話なのですが・・・・ぜひ、皆で考えて貰いたいテーマの一つ。「猫の殺処分の問題」について取上げます。愛猫家の方だけではなく ”一人でも多くの人”にこの問題に関心を持って頂きたいと思い「キャットフード 安全」でこのテーマに取り組みます。なかなか解決の糸口が掴めない難しい問題ですが、最後までお読み頂けると幸いです。
増え続ける動物の殺処分
我々の生活が豊かになるに連れ、様々な "趣味・嗜好・娯楽” が生活に浸透してきました。「ペットを飼う」という行為も、この一つの選択肢として今日多くの方に受入れられています。しかし、ペットを家族同様に大切にされる方がいる一方、様々な事情から飼育困難となりペットを放棄してしまう人もいます。また、一部の業者などによる ”不要となった動物達“ を山などに投棄してしまうなどの、非常に悪質なケースも耳にします。その野放しにされた動物に対する「殺処分などの問題」は、今の日本社会に於ける病理の一つです。この放棄された動物に対し、行政はどの様な対応を取っているのか?そして、この殺処分に対し「その数を減らすべく」どの様な方法を模索しているのか?それらの「取組や展望」について書いてゆきます。
最近は自宅で動物をお飼いになる方が急増しています。特にここ数年は「猫ブーム」などと言われ、TVやインターネットでも取上げられる機会が多いです。こうした ”ペットブーム” に影響を受け、動物を初めて飼いはじめた・・・・という方もいます。しかし、この一時的な流行により発生したとも言える「ペットの飼育」には、ある問題が内在しています。それが飼育動物の放棄という問題です。「ペットを大切な家族の一員」と考え大事にされていた方でさえ、様々な事情から飼い続ける事が困難となり、泣く泣く手放してしまった・・・・という方がいます。「ペットの放棄」という問題は、決して愛猫家の方達にとっても他人事ではありません。
ペットブームの裏側にある問題・・・「飼育動物の放棄」
残念ながらペットである動物を「モノの一つ」としか捉えず、安易に捨てるという選択肢を採る人も存在します。こうした背景から ”飼主に放棄された動物“ は自然と野良という状態に陥り、そのままでは社会に対して様々な悪影響を与えてしまうという懸念から、行政が中心となり行われているのが「野良動物の捕獲と殺処分」という選択です。現状では、こうした殺処分に至るまでの「放棄されている動物の数」は依然として高止まりの状態にあります。草の根を通じて放棄動物の解消や保護に努める活動も行われていますが、日々多くの放棄された動物が殺処分という形で命を落としています・・・・
犬1.6万頭 猫6.7万頭を殺処分という現実
各都道府県では、それぞれのエリアに設置された"動物保健センター"という公的機関を通じ、放棄あるいは野良化した動物の捕獲とその処分を行っています。毎年、全国で「捕獲・殺処分」された動物の頭数は統計が取られておおり、年間を通じて処分される動物の数は、2015年度の統計によれば犬が1.6万頭に対し「猫は何と6.7万頭」が処分されているという数字が公式に発表されています。犬の年間殺処分数1.6万頭という数も問題ですが、何故に猫はその4倍を超える6.7万頭もの数が殺処分という膨大な数になっているのか?その理由の一つとして猫特有の繁殖力の強さがあります。
犬も猫もそれぞれ、体内で子供を一定の大きさになるまで育む「胎生動物」に該当しますが、生殖機能や繁殖機能に関しては若干の違いがあります。犬は人間と同様に、1年を通じて決まったタイミングで排卵を行う「自然排卵」です。それに対し、猫は交尾を意識した段階で常に排卵が行われる「交尾排卵」という繁殖機能を有しており、オスとの交尾を行えば “ほぼ確実に妊娠“ します。この事が、猫が犬よりも圧倒的に殺処分が多い原因の一つと考えられます。
当然ながら、それぞれ適切な避妊手術を施された「飼い猫」と比べ、野良化してしまった猫のほぼ全てには、こうした避妊手術が施されていません。またオスはその性質から本能に基いて、別のメスを探して交尾行動を行います。結果的に慢性的な野良猫の急増に一役買ってしまっている・・・・という悲しい現実があります。ただし「犬・猫」それぞれの年間殺処分数ですが、現在と比較すると10年前は更に多い殺処分数を記録していました。これには、猫の殺処分に対する"世間の関心や意識が高まってきた”事を受け様々な「殺処分減少の為の努力や活動」が行われた事が関係しています。これらの活動の多くは、個人や民間団体の方々が率先して行っている”草の根活動”として、徐々にではありますがその活動の輪が広がっています。
行政と民間団体との協力による効果 殺処分数の減少
上記した様に犬や猫の殺処分数は、ここ10年間で徐々に減少してきています。それでも、依然として少なく無い数の猫たちが、毎年保健所や関連施設を通じて殺処分されるという現実があります。もちろん、この状況に対し何もしていない訳ではありません。行政はもちろんの事、その行政の活動を支える形で有志の個人や民間団体による様々な保護活動が行われ一定の成果を挙げています。
また、環境省から発表された「動物の殺処分方法に関する指針」では、殺処分の対象となる動物に対し”出来るだけ苦痛を与えない方法を採る事が好ましい”という内容が明記されており、この指針に従い安楽死などの処分が図られれています。しかし、こちらもコストの問題により全ての殺処分で実施されている訳ではありません。この様な悲しい現実が世間に公表され浸透する事により、徐々に活発化していったのが「殺処分の減少を目的に結成された民間団体の登場とその活動です。
もともとは、動物の殺処分という事態を憂慮した「ブリーダーや動物愛好家」達の方々による、草の根的な活動がその始まりでした。しかし個人として活動を行うよりも、一つの団体として活動する事により、その効果を更に高めようという目的のもと、民間団体として「動物の殺処分の減少を目的」とした活動を行うグループが全国希望で誕生しました。また、NPO制度が日本国内で浸透してきた事も追い風となり、こうした民間団体の活動はさらに活発化してきました。なかには行政と包括的な提携を行った上で、殺処分の対象となる動物を救護したり里親捜しなどの作業を行うなど地道な活動を続けています。こうした活動により、少しずつですが殺処分の頭数も減少するなど 一定の効果をあげています。
法律の改正と保健所の取り組み
また、行政においても ”放棄されてしまった動物” の引き取りを最前線で行っていた「保健所や保健センター」などの活動に大きな変化をもたらしたのが、2012年に改正された動物愛護法による影響です。この改正では、それまでは特段の理由が無い限り、原則すべての動物を引き取っていた保健所などの活動に対し「終生飼養の責務」という趣旨に照らし合わせた、新たな制約を設けました。各保健所に対しても「要らなくなったから」や「引っ越しなどの理由で飼うことが出来なくなったから」・・・・などの、飼主側の安易な理由による引き取りの要求を一切拒否出来る権限 を新たに付与!!これにより、保健所で保護される殺処分対象の猫の数は大幅に減少しました。
ただ、この取り組みだけでは、保健所による引き取り頭数が減少はするものの、野良として放棄された動物の数自体は減らす事が出来ず、抜本的な解決策とは言えない現状があります。それでも、民間団体による活動や関連諸法を通じた「動物放棄に対する意識改革」などが図られた結果、2019年現在まで殺処分頭数は、確実な減少傾向を見せ始めています。
ペットショップによる店頭陳列販売の問題 実はペット後進国の日本
これらの活動を通じ、殺処分の対象となる猫などの数は一定数以下にまで減少したものの、それでも殺処分0にはほど遠い状況です。要因としては二つあります。一つ目は、飼主側の高齢化や少子化などの環境の変化が要因として挙げられます(※飼主さんの方がペットより先に亡くなってしまう事例が特に増えています)それまでは家庭で飼育されてきた動物たちが、ある日突然飼育放棄などの憂き目にあい保健所に持ち込まれてしまう、あるいは捨てられ保護されるというケースが後を絶ちません。こちらは法律の整備などにより、徐々にその数を減らしながらも未だ0にまでは至る事が出来ていません。
もう一つのケースとしては「ペット動物の商品化」が挙げられます。日本では犬や猫などの動物を飼う場合に、ペットショップを利用するのは一般的になっています。しかし、欧米を中心とした世界規模で動物の取引について調べてみると、ペットを商品の一つとして店頭で展示販売している国は日本など極々わずか 。多くの国では、ペットを飼育する場合は所定の手続きを経た上でブリーダーから直接引き取るか、あるいは譲渡会などを通じて提供される動物を引き取るという方法が一般的です。
この店頭に展示販売されている動物に対し、お金を支払って購入するという形式は「日本ならではの悪しき手法」とも言われ、近年は動物愛護の観点からも他の国から批判の対象となっています。その一方、最近ではこうした批判を受け「犬や猫などの愛玩動物の店頭陳列を一切行わない!!」と宣言するペットショップも登場しており、ペットショップに由来する殺処分動物との繋がりにも一石を投じる行為として注目されています。
殺処分0に向けた今後の課題 意識改革が殺処分を減らす
殺処分ゼロに向けた取り組みは海外の事例などを参考にしながら、日本国内でも徐々にその考え方が浸透し始めています。未だ法整備を含めた様々な点で遅れを感じながらも、その数をゼロへと近付けるべく、飼育動物に対するマイクロチップの埋め込みによる個体判別や、飼育動物を放棄した行為に対する罰則規定の盛り込み、さらには放棄された動物の保護活動に対する公費投入や公的支援の拡充などが、既に具体例として検討され始めています。
実際に上にあげた様な手法は、いずれも殺処分を減少させるのに有効な手法ばかりです。しかし、これらの手法は「あくまでも対症療法であり根本的な解決とはなり得ません」。「要らなくなったからと安易に動物を捨ててしまう」・・・・この、思考の愚かさや倫理観の欠如こそがそもそもの原因です。ペットは私たち人間に対し喜びや潤い、癒しや幸福感を与えてくれる大切な存在であり、家族の一員です。その終末期までしっかりとした責任を飼主側が持つ事が、殺処分をゼロにする最も重要なポイントと言えるのではないでしょうか。